クラウドファンディング「OwnersBook」事業者の財務健全性
湖南(こなん)です。
ソーシャルレンディング事業者の財務健全性として、自己資本比率を中心とした切り口で各事業者を紹介しています。
第三回目は「OwnersBook」を取り上げます。ブログでのカテゴリーとしてはソーシャルレンディングとしてまとめてしまっていますが、実際には不動産投資型クラウドファンディングという形式で、ソーシャルレンディングとは趣が多少異なるものです。
OwnersBookはファンドの情報透明性により安心感が高く、また運営元のロードスターキャピタル株式会社は東証マザーズへ上場しており、一般的には健全性・信頼性が高いと言われています。
実際の所はどうなのでしょうか。
ロードスターキャピタルの最新連結決算短信は下記となります。(2018年6月30日付)
企業構成としては親会社であるロードスターキャピタルと投資資金管理を行う子会社のロードスターファンディングの二社で構成されている模様です。当然ながらこの子会社も直近の単体決算は開示されており、透明性は高いと言えるでしょう。
ロードスターファンディング株式会社 平成29年度(2017年度)決算公告
まずは、今までと同様に自己資本比率を算出してみましょう。
【純資産】 5,378百万円
【総資産】28,525百万円
【自己資本比率】18.8%
※現預金 4,739百万円
なお、OwnersBookは今期かなり投資資金を伸ばしているようです。前2社と同様に「匿名組合出資預り金」を総資産から除いた形で、【算定用】として再度計算してみます。
【純資産】 5,378百万円
【算定用】23,781百万円
【自己資本比率】22.6%
※現預金 4,739百万円
前二社と比較して自己資本比率が低い結果に意外と感じた人もいるでしょうか。まず好意的な意見を述べるとしますと、不動産事業では物件の取得が多いという所もありますので、この数値が一概に低いという物ではないという所です。
ただ一方でこれが示すものとしましては、外部向け資料などではクラウドファンディングのアピールが非常に強いのですけれども、実際にはロードスターキャピタルの資金繰りにおいては主となるものが不動産事業であること、ここに尽きるかと思われます。
実際に売上の方も不動産投資事業・不動産賃貸事業が過半を占めており、クラウドファンディング事業はまだまだ付帯的な位置付けに過ぎないという点です。
実業として強みを持っていると評価できる一方、市況としては不動産業界そのものの先行きが今後不安視される中、この部分をどうみるかは正直評価が分かれそうな所ではあります。
maneoやクラウドバンク等とは異なり、良くも悪くもクラウドファンディング専業というのは成り立ち・業態として考えにくいです。経営層は既存不動産事業とのシナジーを、とは考えているのでしょうが。
あと、ぱっと見て流動資産が非常に多く見えて資金繰り良さそうに見えちゃいます。ただその過半は本来固定資産である不動産を「販売用不動産」と称して計上しているものが占めています。
もっとも、これは三井・住友などの他大手もそうであり不動産業界ではごく一般的な話になるかと思われます。他業種と比べれば自己処分もしやすく…という所なのでしょうけれども、ここは逆に少し割り引いて見た方が良いでしょう。
やや穿った見方が続いてしまいましたので、良い意味でもう一つ自己資本比率以外に貸借対照表で特筆すべき点としましては、流動負債が非常に少ないのは明らかに経営基盤が堅固だと評価できます。前回のJCサービス(グリーンインフラレンディング)とは実に好対照です。
と、あまりまとまりのない文となってしまいました。OwnersBookにつきましては情報開示度も高く、少なくとも短期的に事業者ロードスターキャピタルが破綻するリスクは非常に少ないと判断しています。
ただ長期的な観点ですと、述べました通り不動産市況の先行きなど人によっては少し意見が分かれる所はあるかもしれません。
次回はTATERUを予定しています。トラストレンディングは……少し時間がかかりそうです。